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はじめに

 ひとことで焼物を作ると言っても、実に様々な工程があります。ここでは、作業工程を粘土・釉薬・作品の3つに大別に、それぞれについて解説していきます。

粘土原料採取→ねかし→調整→湿式粉砕→脱水→混練→粘土完成
釉薬原料採取・灰生成→(灰)水簸→調合→湿式粉砕→釉薬完成
作品成形→半乾燥→削り・仕上げ→素焼→施釉→本焼→作品完成

粘土

[原料採取]
原土  伝統的な窯業地のほとんどがそうであるように、楢岡焼もまた地元で採取される粘土を使用しています。すぐ近くに粘土の採れる場所があるのですが、現在楢岡焼で確保してる分だけでも100年以上は使い続けることが可能であろうと推測されております。

[ねかし]
 採取してきた粘土(原土)はすぐに使えるわけではありません。屋外に放置して風雨に晒し、風化を進めてやることで砕けやすくなり、粘性が増し、可溶性のアルカリ分が抜けて成形に適した粘土へと変化していきます。この放置しておく過程を「ねかし」といい、数年間行います。

[調整]
 この原土のみでも作品を作ることができますが、焼いた後に割れてしまう「冷め割れ」という現象を起きやすく、また耐火度も充分でないため焼成中に変形してしまうおそれがあります。そのため、冷め割れを防ぎ耐火度を上げるために他の原料(砂のようなもの等)を混ぜて成分調整を行っております。

[湿式粉砕]
ボールミル(奥)とフィルタープレス(左)  今まで原土という表現を使用してきましたが、それらはどちらかと言えば「砕くことのできる石」といった様相をしています。それを細かく砕き、均質にするためにボールミル(トロンメルとも言います)という機械を用い、水を加えて粉砕します。粉砕された後は、泥水のような状態になっております。

[脱水]
 このままでは水分が多すぎて成形できません。そのため、フィルタープレスという機械を用いて、泥水状になった粘土から余分な水分を取り除きます。これでようやく粘土らしくなってきます。

[混練]
 脱水直後の粘土は形状的に使用しにくく、また水分量等においても一定ではないため、最後に練り混ぜる必要があります。それには土練機(どれんき)という機械を用います。粘土をよく練り混ぜ、余分な空気を抜くことでようやく成形可能な粘土ができあがります。

釉薬

[原料採取・灰生成]
 楢岡焼の最大の特徴である海鼠釉。その釉薬は3種類の原料をうまく組みあわせることで得られます。主原料は白土(はくど)と呼ばれる風化火山灰です。ほとんどの窯業地では釉薬の主原料は長石(陶石の場合もあります)なのですが、楢岡焼ではその白土を主原料としている点が他と大きく異なります。
 その白土に、楢の灰とワラの灰を混ぜます。もちろん、これらの灰は実際に楢の木やワラを燃やして作ります。楢の灰を混ぜることで釉薬が溶けやすくなり、ワラの灰を混ぜることでガラスのような光沢・透明感が生まれます。そして、これらの配合割合がある条件にピタリと一致すると、海鼠釉の青白さが生まれてくるのです。

[灰の水簸]
 実は、灰はそのままでは使えません。土壌改良剤として田畑に灰をまいたりすることがあるように、灰は強アルカリ性なのです。そして、水に溶け出すアルカリ成分(可溶性アルカリと呼びます)は焼物にとって大敵であるため、それを取り除く作業が必要になります。具体的には、大きな容器に灰と大量の水を入れ、よくかき混ぜてから1日放置して上水を捨て、また大量の水を加えてかき混ぜるという作業を繰り返します。この作業を「水簸(すいひ)」と呼びます。これは十数回行います。

[調合]
 釉原料が準備できたら、調合を行います。もちろん多くは海鼠釉を調合するのですが、調合割合を変えることで例えば白い釉薬を作ることも可能です。昔は、それぞれの原料を杓で一杯二杯...と大ざっぱに加えて調合としていたのですが、現在は全ての原料を完全に乾燥させ、重さを測って調合しています。

[湿式粉砕]
 調合した釉薬はすぐそのまま使えるわけではなく、細かく砕きかつしっかり混ぜる必要があります。それにはポットミルと呼ばれる容器と機械を用います。原料と玉石と水を入れて数時間回し続けることで、ようやく釉薬が完成します。

作品

[成形]
 作品を作る方法はいろいろありますが、私共は大きく分けて2種類の方法を用いています。1つは電動ロクロを用いたロクロ成形、そしてもう1つはタタラ板を用いたタタラ成形です。多くの品物は前者のロクロ成形で作ってますが、円形ではないお皿(例えば角皿)は後者のタタラ成形で作ってます。

[半乾燥]
 成形直後の品物はまだ非常に柔らかい状態です。削ったり仕上げしたりするためには、少し乾燥させて固くした方が作業しやすいため、1〜2日放置して半乾燥状態になるようにします。このとき、例えば天気がいいからといって急乾燥させてしまうとヒビや歪みが生じてしまいますし、梅雨や冬季のような乾きにくい季節はなかなか次の工程に進めなかったりします。

[削り・仕上げ]
 半乾燥状態の品物は持ったりひっくり返したりしても変形しにくいため、このタイミングを逃さずに作業を行います。このとき高台(器の底にある円状の足)を削りだしたり、角を丸めたり、カップの把っ手をつけたりします。その後、急乾燥にならないように気をつけながら乾かしていきます。

[素焼]
 完全乾燥させた後、素焼(すやき)を行います。だいたい800度ぐらいの温度で焼くのですが、それによって余分な水分(結晶水も含む)や有機分が抜けていきます。すると作品が固くなって扱いやすくなり、また水に濡れても壊れなくなります。

[施釉]
施釉済みの作品  素焼が終わったら、それに釉薬をかけます。これを施釉(せゆう)と呼びます。釉薬を薄く掛けてしまうとよく発色しませんし、かといって厚く掛けると釉薬が下まで流れてしまう可能性があります。もちろん、厚みにムラがあってもいけません。誰にでもできるように見えて意外と難しい作業なのです。
 なお、海鼠釉は主に品物の外側下半分には掛けません(流下するため)が、その部分には代わりに飴釉を薄く掛けます。こうすることにより、素地が吸水性をもたないようにしています。

[本焼]
 施釉が終わったら、あとは焼くだけです。素焼と区別するために、本焼と呼びます。楢岡焼では1250〜1280度前後で焼きますが、焼物の産地によっては1200度ぐらいで焼くところもあれば1300度以上で焼くところもあります。
 原料採取やら成形やら...全ての工程の結果が窯出しの一瞬で表現されるわけですから、大きな期待と不安が交錯し、そしてそこに大きな喜びと反省が凝縮されています。
 胸を張って楢岡焼を冠することができるものだけがお客様の手元に渡り、そうでないものは割られ、哀しき破片となって沈黙し続けます。
e-mail:info@naraokayaki.jp

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